相続農地の処分方法完全ガイド!売却・転用・国庫帰属の手続きと費用を徹底解説

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相続した農地の処分に悩む皆さまへ。農地の所有は、固定資産税や管理の負担、さらには近隣トラブルのリスクを伴うことが少なくありません。
特に農業を継ぐ意思がない場合、その処分は喫緊の課題となります。

農地の処分方法は主に「売却」「転用」「国庫帰属」の3つの選択肢があります。
それぞれの方法には、農地法という強力な法律による規制が関わるため、専門的な知識が必要です。


■■ 1. 農地としての売却(農地法第3条)

農地を農地のまま第三者に売却する方法は、最も基本的な選択肢です。
しかし、農地の売買には農地法第3条に基づく農業委員会の許可が必須となります。

◆ 許可の要件と難しさ

農地法は、優良な農地の確保と効率的な利用を目的としています。
そのため、農地を購入できるのは原則として「耕作を目的とする農家または農業法人」に限定されます。

・譲受人(買主)の要件:
 - すべてを効率的に利用できるか: 買主が所有する全農地について効率的な耕作を行うと認められること。

 - 農作業に常時従事すること: 原則として、農地の取得後に必要な農作業に年間150日以上従事することが求められます(ただし、2023年4月1日より下限面積要件は廃止されました)。

 - 周辺農地との調和: 周辺の農地の農業利用に支障を及ぼさないこと。

・注意点:
農業従事者の減少に伴い、これらの要件を満たす買い手を見つけること自体が難しくなっています。
また、売買契約を締結しても、農業委員会の許可が下りなければ契約は無効となります。

◆ メリット・デメリット

項目メリットデメリット
売却農地価格を得られる。手続きはシンプル(許可が下りれば)。買主が限定的で、見つけにくい。売買に時間がかかる。

■■ 2. 農地転用後の売却または利用(農地法第4条・第5条)

農地を宅地や駐車場など、農地以外の用途に変更する手続きを農地転用といいます。転用することで、用途が広がり売却の可能性が高まり、価格も農地のままより高くなることが一般的です。

◆ 転用許可の区分と要件
農地転用には、農地法第4条(農地所有者が自ら転用する場合)または農地法第5条(農地の権利移動を伴う転用の場合、例:転用目的で売買)に基づく都道府県知事の許可(または農業委員会への届出)が必要です。

最も重要なのが「立地基準」による農地区分の確認です。
農地は、その優良性や市街地化の状況により、以下の通り区分され、転用の可否が厳しく判断されます。

・農用地区域内農地・甲種農地・第1種農地:
原則として不許可。優良農地であり、原則として農地以外の利用は認められません。

・第2種農地:
市街化が見込まれるなど、生産性の低い農地。
周辺に代替地がないなどの例外的な場合に限り許可される可能性があります。

・第3種農地:
市街地の区域または市街化の傾向が著しい区域にある農地。
原則として許可されます。

また、市街化区域内の農地であれば、事前に農業委員会への届出をすることで許可が不要になります。

◆ 手続きの流れ

  1.  農地区分の確認:
    自分の農地がどの区分に該当するかを農業委員会で確認します。
  2.  農振除外:
    農用地区域内農地の場合、まず農業振興地域整備計画から農地を除外する手続き(農振除外)が必要です。
    この手続きには相当な時間がかかり、認められないことも多いです。
  3.  転用許可申請/届出:
    所定の書類を作成し、農業委員会経由で都道府県知事等に申請します。
    事業計画の確実性(資金計画等)も重要な審査基準です。
  4.  転用工事・利用:
    許可が下りれば、転用工事を行い、その後売却または自己利用が可能となります。

◆ メリット・デメリット

項目メリットデメリット
転用用途が広がり、高値で売却できる可能性がある。許可基準が厳しく、特に優良農地は原則転用不可。手続きに時間と費用がかかる。

■■ 3. 相続土地国庫帰属制度(2023年4月施行)

2023年4月に施行された相続土地国庫帰属制度は、相続または遺贈で取得した不要な土地(農地・山林を含む)を、一定の要件を満たし、負担金を納付することで国庫に帰属させることができる新しい制度です。

◆ 申請できる農地
この制度は、「管理が大変な土地を国が引き取る」ための制度であり、以下の要件を満たす必要があります。

・相続等で取得した土地であること: 売買等で自ら取得した農地は対象外です。

・承認要件:
 - 権利関係の要件: 担保権や使用収益権(地上権、賃借権など)が設定されていないこと。

 - 管理の要件: 土壌汚染がないこと、危険な崖がないこと、特定有害な物が残置されていないことなど、通常の管理に過分な費用や労力がかからない状態であること。

 - 農地特有の要件: 農地であっても、農地法第3条の許可取得は不要で、申請が可能です。

 - 共有の場合: 共有者全員の合意が必要です。

◆ 費用と手続き
・審査手数料:
土地1筆あたり14,000円の審査手数料を収入印紙で納付します(審査の結果、不承認となっても返還されません)。

・負担金:
帰属が承認された場合、土地の性質に応じて算定される10年分の標準的な管理費用相当額を納付する必要があります。
農地の場合、原則として20万円ですが、土地改良区の受益地であるなど、特定の地域や状況によって金額が加算されることがあります。

・手続き:
申請は法務局に対して行います。

◆ メリット・デメリット

項目メリットデメリット
国庫帰属売却や転用が難しい農地を確実に手放せる。農地法第3条の許可は不要。管理負担から解放される。審査手数料・負担金が発生する(原則20万円)。承認要件が厳しく、管理費のかかる農地は不承認となる可能性が高い。売却代金は得られない。

■■ 最適な処分方法の提案と専門家への相談

どの処分方法が最適かは、農地の所在地(市街化区域か調整区域か、農地区分)、規模、そして周辺の土地需要によって大きく異なります。

◆ 処分のステップ

  1.  農地の現状把握:
    登記簿謄本、公図、固定資産税納税通知書などを確認し、正確な地目や所在地、面積を把握します。
  2.  農業委員会への相談:
    最寄りの農業委員会で、農地の区分(優良農地かそうでないか)や、農地転用の可能性、周辺の農地利用状況について相談し、売却または転用が可能か否か、また難易度を把握します。
  3.  専門家への相談:
     - 売却・転用を検討する場合: 農地取引に精通した不動産仲介業者や行政書士に相談し、買い手が見つかる可能性や、転用にかかる費用、手続きを試算してもらいます。  - 国庫帰属を検討する場合: 法務局の担当窓口や司法書士に相談し、承認要件を満たしているかを確認します。

■■ 専門家としての結論

優良農地であれば、まずは農地としての売却(農地法第3条)を試みるのが基本です。
市街地に近く、第2種・第3種農地であれば転用後の売却(農地法第5条)による資産価値向上を目指すべきです。

しかし、これらの方法が困難で、かつ農地の管理負担からただ解放されたいと考える場合は、相続土地国庫帰属制度が有力な選択肢となります。
ただし、管理費用相当額の負担金が発生する点、承認要件をクリアする必要がある点には留意が必要です。

農地に関する手続きは複雑で、法的な規制が多岐にわたるため、自己判断せず、必ず農業委員会や行政書士、司法書士などの専門家に相談し、適切な手順を踏んで進めることが、失敗しない処分への鍵となります。

まずは一歩を踏み出し、お持ちの農地の現状を把握することから始めましょう。
ご自身の状況と農地の特性に合わせた最適な選択肢を見つけられるよう、専門家としてサポートさせていただきます。

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