
確かに、老後の資産形成は多くの方が抱える不安の一つです。特に、2024年から始まった新NISAは、非課税投資枠が大幅に拡充され、これまで以上に資産形成の強力な味方となりました。しかし、「とりあえず1万円から積立を始めてみよう」と考えている方も少なくないのではないでしょうか?
実は、この「とりあえず1万円」という考え方には、老後の資産形成を成功させる上で見過ごせない落とし穴があります。本稿では、なぜ「とりあえず1万円」では不十分なのか、そして新NISAを最大限に活用し、老後の計画を着実に立てるための具体的なコツを詳しく解説します。
■■ 【新NISA】積立をとりあえず1万円でしてはいけない理由!老後の計画を立てるコツ
新NISAが始まり、「投資を始めてみようかな」と考えている方も多いでしょう。その際、「まずは少額から」と、とりあえず月1万円の積立を検討する方もいるかもしれません。しかし、結論から言うと、老後の資産形成を真剣に考えるならば、「とりあえず1万円」という積立額では、残念ながら十分とは言えません。
その理由は、主に以下の3つの点に集約されます。
◆ 理由1:目標達成までの期間が長くなりすぎる
老後の生活資金として、一体いくら必要なのかは個人のライフスタイルによって異なりますが、一般的には数千万円単位の資金が必要になると言われています。例えば、夫婦二人がゆとりある老後を送るためには、公的年金に加えて毎月5万円〜10万円程度の追加資金が必要という試算もあります。これを30年、40年と続けると、老後資金として2000万円から3000万円、あるいはそれ以上の金額が必要になる計算です。
もし月1万円の積立を続ける場合、仮に年利5%で運用できたとしても、30年で約830万円、40年で約1520万円にしかなりません(運用益にかかる税金は考慮していません)。これでは、目標とする老後資金には遠く及ばない可能性が高いのです。
積立額が少なければ少ないほど、目標金額に到達するまでの期間が長くなり、途中で経済状況の変化や予期せぬ出費があった場合に計画が破綻するリスクが高まります。
◆ 理由2:複利効果を十分に享受できない
投資の最大の魅力の一つに「複利効果」があります。複利とは、運用で得た収益を再び投資することで、元本だけでなく収益にも収益がつくことで、雪だるま式に資産が増えていく効果を指します。
複利効果は、「金額が大きいほど」「期間が長いほど」その威力を発揮します。月1万円という少額では、たとえ長期で運用したとしても、複利効果による恩恵を十分に享受することが難しいのが現状です。
例えば、毎月5万円を年利5%で30年間積立てた場合、元本1,800万円に対して約4,160万円に増えます。一方、毎月1万円では元本360万円に対して約830万円にしかなりません。同じ30年という期間でも、積立額の差が最終的な資産に大きな影響を与えることが分かります。
◆ 理由3:新NISAの非課税枠を最大限に活用できない
新NISAは、つみたて投資枠で年間120万円(月10万円)、成長投資枠で年間240万円、合計で年間360万円の投資が可能であり、生涯投資枠は1800万円まで拡大されました。この非課税枠を最大限に活用することは、効率的な資産形成において非常に重要です。
月1万円の積立では、年間わずか12万円。これは、つみたて投資枠のわずか10%しか利用していないことになります。せっかく用意された非課税枠を使わない手はありません。非課税枠を有効活用することで、本来なら税金として引かれるはずだった運用益が手元に残るため、より効率的に資産を増やすことができます。
非課税枠は、私たちの資産形成を国が後押ししてくれる制度です。この恩恵を最大限に受けるためにも、可能な範囲で積立額を増やし、非課税枠を使い切ることを目指すべきです。
■■ 老後の計画を立てるコツ:新NISAを最大限に活用するために
では、「とりあえず1万円」ではダメだと分かった上で、具体的にどのように老後の計画を立て、新NISAを活用していけば良いのでしょうか?ここでは、そのコツを詳しく解説します。
◆ コツ1:老後に必要な資金額を具体的に把握する
まずは、漠然とした不安を具体的な目標に落とし込むことが重要です。
・現在の生活費を把握する:
家計簿をつけたり、クレジットカードの明細を見直したりして、毎月いくら使っているのかを把握しましょう。
・老後の理想の生活をイメージする:
趣味、旅行、住居、医療費など、老後にどんな生活を送りたいかを具体的にイメージし、それにかかるであろう費用を概算します。
・公的年金の見込み額を確認する:
ねんきん定期便などを確認し、将来受け取れる年金額を把握しましょう。
・不足額を算出する:
老後に必要な生活費から公的年金の見込み額を差し引けば、毎月いくら不足するのか、そして総額でいくら補填する必要があるのかが見えてきます。
例えば、老後に毎月30万円の生活費が必要で、年金が20万円もらえると仮定すると、毎月10万円が不足します。これが30年間続くとすれば、10万円 × 12ヶ月 × 30年 = 3600万円が不足額の目安となります。
この具体的な不足額を把握することで、「〇〇万円貯める」という明確な目標が設定でき、それに向けて毎月いくら積立てるべきかが見えてきます。
◆ コツ2:逆算思考で積立額を決める
目標金額が定まったら、次に考えるべきは「いつまでに」「いくら」積立てるかです。
・目標達成までの期間を設定する:
定年退職までの年数や、老後の資金が必要になる時期を考慮して期間を決めます。
・目標金額と期間から毎月の積立額を計算する:
金融庁のウェブサイトや証券会社のシミュレーションツールなどを活用すると便利です。目標金額、運用期間、想定利回りを入力するだけで、毎月の積立額が算出されます。
例えば、30年後に3600万円を目標とし、年利5%で運用できると仮定した場合、毎月約4.8万円を積立てる必要があります。もし、年利3%であれば約6.5万円、年利7%であれば約3.5万円となります。
このように、具体的な数字に基づいて積立額を逆算することで、無理のない範囲で最大限の効果を狙える計画が立てられます。
◆ コツ3:積立額は「手取り収入の〇〇%」で考える
積立額を決めるときの基準として、「手取り収入の〇〇%」という考え方を取り入れると、生活費とのバランスを取りやすくなります。一般的には、手取り収入の10%〜20%を貯蓄や投資に回すのが理想的とされています。
もちろん、これはあくまで目安です。現在の家計状況や将来設計に合わせて、無理のない範囲で、しかし可能な限り高めの割合を設定することが重要です。
・固定費を見直す:
スマートフォン代、保険料、サブスクリプションサービスなど、毎月固定でかかる費用を見直すことで、積立に回せる資金を捻出できる可能性があります。
・変動費を削減する:
外食費、娯楽費など、変動する費用を意識的に抑えることで、積立額を増やすことができます。
無理な節約は続きませんが、少しの工夫で積立に回せる資金は意外と見つかるものです。
◆ コツ4:新NISAの非課税枠を意識したポートフォリオを組む
新NISAのつみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を最大限に活用できるよう、投資商品を検討しましょう。
・つみたて投資枠:
安定的なリターンが期待できる、全世界株式やS&P500などのインデックスファンドがおすすめです。長期・分散・積立投資の原則に沿って、毎月一定額を自動で積み立てることで、感情に左右されずに投資を続けることができます。
・成長投資枠:
こちらは、つみたて投資枠で積み立てている商品に追加で投資したり、高配当株や個別株など、より積極的な運用を目指す商品に投資したりすることも可能です。ただし、リスクも伴うため、ご自身の許容できるリスクレベルを理解した上で検討しましょう。
無理に全ての枠を使い切る必要はありませんが、可能な限り非課税枠の恩恵を受けることを意識することが大切です。
◆ コツ5:定期的な見直しと調整を行う
一度計画を立てたら終わりではありません。ライフステージの変化(結婚、出産、住宅購入など)や経済状況の変化(収入の増減、市場の変動など)に合わせて、定期的に計画を見直すことが重要です。
・年に一度は計画を見直す:
収入や支出、投資の状況を確認し、必要であれば積立額や投資商品の配分を見直しましょう。
・市場の変動に一喜一憂しない:
投資は短期的な値動きに惑わされず、長期的な視点を持つことが重要です。暴落時こそ、安く買い増せるチャンスと捉えるなど、冷静な判断を心がけましょう。
・知識をアップデートする:
投資に関する情報や経済ニュースに触れ、常に新しい知識を吸収することで、より賢明な投資判断ができるようになります。
■■ まとめ:計画的な積立で豊かな老後を
「とりあえず1万円」という積立では、老後の目標達成には不十分である可能性が高いことをご理解いただけたでしょうか。新NISAの恩恵を最大限に享受し、豊かな老後を送るためには、以下の点を意識して計画的に積立を行うことが重要です。
- 老後に必要な資金額を具体的に把握する
- 逆算思考で毎月の積立額を決める
- 積立額は「手取り収入の〇〇%」で考える
- 新NISAの非課税枠を意識したポートフォリオを組む
- 定期的な見直しと調整を行う
もちろん、すぐに多額の積立を始めるのが難しい場合もあるでしょう。しかし、大切なのは「始めること」そして「続けること」です。まずはできる範囲で積立額を増やし、徐々に目標に近づけていく意識を持つことが重要です。
老後の資産形成は、一朝一夕でできるものではありません。しかし、新NISAという強力な制度を味方につけ、計画的にコツコツと積立を続けることで、漠然とした不安を解消し、安心して老後を迎えられる可能性が高まります。今日から、具体的な行動を始めてみませんか?










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