空き家になる前に!相続した実家の維持リスクと活かせる土地の使い道

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実家を相続するという経験は、多くの方にとって人生の大きな転機の一つです。しかし、喜びや感慨深さとともに、将来の維持コストや管理、活用方法について不安を感じる方も少なくありません。特に、これまで実家を離れて生活していた方にとっては、具体的なイメージが湧きにくいかもしれません。

この記事では、不動産や相続に関する専門家の視点から、実家相続に伴う維持コストや潜在的なリスクを詳しく解説し、さらに相続した土地や建物を有効に活用するための具体的な方法を提案します。この記事を読むことで、あなたが抱える不安を解消し、安心して実家相続の手続きを進め、最適な選択をするための一助となることを目指します。

■■ 1. 実家相続で発生する主な維持コスト

実家を相続すると、たとえ住んでいなくても様々な維持コストが発生します。主なものをみていきましょう。

◆ 1-1. 税金:固定資産税・都市計画税

不動産を所有している限り、毎年課税されるのが固定資産税です。市街化区域内に土地や家屋がある場合は、都市計画税も合わせて納付する必要があります。

・固定資産税:
土地や家屋の評価額(固定資産税評価額)を基に算出されます。標準税率は1.4%ですが、自治体によって異なる場合があります。住宅用地については、面積に応じて課税標準額が1/6または1/3に軽減される特例措置があります。

・都市計画税:
都市計画事業や土地区画整理事業の費用に充てるための税金で、制限税率は0.3%です。こちらも住宅用地の特例措置が適用されます。

【注意点】:
相続した実家が「特定空家等」に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が適用されなくなり、税額が最大で6倍になる可能性があります。

◆ 1-2. 保険料:火災保険・地震保険

万が一の災害に備えて、火災保険への加入は必須と言えるでしょう。特に木造家屋の場合は、火災リスクが高まります。また、日本は地震が多い国であるため、地震保険への加入も検討すべきです。

・火災保険料:
建物の構造(木造、鉄骨造、コンクリート造など)、所在地、補償内容によって保険料は大きく変動します。

・地震保険料:
火災保険とセットで加入します。所在地や建物の耐震性能によって保険料が異なります。

◆ 1-3. 修繕・管理費

建物は経年劣化するため、定期的な修繕が必要です。また、空き家であっても適切に管理しなければなりません。

・建物修繕費:
屋根や外壁の塗装・補修、給湯器や水回り設備の交換など、築年数に応じて様々な修繕が必要になります。放置すると劣化が進み、さらに高額な修繕費用が発生する可能性があります。
 * 例:外壁塗装(10~15年ごと):80万円~150万円程度
 * 例:給湯器交換(10~15年ごと):15万円~40万円程度

・庭の手入れ費用:
庭がある場合は、定期的な草むしり、植木の剪定などが必要です。自分でできない場合は、業者に依頼する費用が発生します。放置すると景観が悪化するだけでなく、害虫が発生したり、近隣トラブルの原因になったりすることもあります。

・水道光熱費(基本料金など):
空き家にしていても、電気や水道の契約を維持している場合は基本料金がかかります。また、建物の換気や通水のために定期的に電気や水道を使用することもあります。

・管理委託費用:
遠方に住んでいるなど、自分で管理できない場合は、不動産管理会社に管理を委託する方法もあります。費用は管理内容によって異なります。

◆ 1-4. その他の費用

上記以外にも、以下のような費用が発生する可能性があります。

・町内会費、自治会費:
地域によっては、空き家でも負担が必要な場合があります。

・浄化槽の維持管理費:
浄化槽が設置されている場合は、定期的な点検や清掃費用がかかります。

・解体費用(将来的に発生する可能性):
建物の老朽化が進み、活用も売却も難しい場合は、解体費用も考慮しておく必要があります。木造家屋の場合、1坪あたり3万円~5万円程度が目安です。

これらの維持コストは、年間で数十万円に上ることも珍しくありません。相続する前に、これらの費用を具体的に試算しておくことが重要です。

■■ 2. 実家相続に伴う主なリスク

維持コストだけでなく、実家相続には様々なリスクも伴います。事前にリスクを理解し、対策を検討することが大切です。

◆ 2-1. 空き家リスク

相続した実家に誰も住まない場合、「空き家」となります。空き家を放置すると、以下のようなリスクが生じます。

・老朽化・倒壊のリスク:
定期的なメンテナンスが行われないと、建物の劣化が急速に進みます。雨漏り、シロアリ被害、構造材の腐食などが進行し、最終的には倒壊の危険性も出てきます。特に、台風や地震などの自然災害時には、被害が拡大しやすくなります。

・防犯・防災上のリスク:
人の気配がない空き家は、不法侵入や放火、ゴミの不法投棄などのターゲットにされやすくなります。また、老朽化による倒壊や火災は、近隣住民にも被害を及ぼす可能性があります。

・「特定空家等」に指定されるリスク:
著しく保安上危険となるおそれのある状態や、著しく衛生上有害となるおそれのある状態など、放置することが不適切と判断された空き家は、自治体から「特定空家等」に指定されることがあります。指定されると、行政から助言・指導、勧告、命令が出され、最終的には行政代執行(強制的な解体など)が行われる可能性もあります。この場合、解体費用は所有者が負担し、前述の通り固定資産税の軽減措置も解除されます。

・近隣トラブルのリスク:
庭木が隣地に越境したり、落ち葉が飛散したり、害虫や害獣が発生したりすることで、近隣住民とのトラブルに発展するケースがあります。また、景観の悪化も問題視されることがあります。

◆ 2-2. 資産価値変動リスク

不動産の価値は常に変動します。

・不動産市場の変動:
景気の動向や金利、不動産市況、地域の再開発計画など、様々な要因によって不動産価値は上下します。将来的に売却を考えている場合、相続時よりも価値が下落している可能性も考慮しておく必要があります。

・建物の減価償却:
建物は築年数の経過とともに価値が減少していきます(減価償却)。特に木造家屋の場合、法定耐用年数は22年とされており、築年数が古いほど建物自体の価値は低くなります。

・周辺環境の変化:
近隣に新たな高層建築物が建って日照が悪くなったり、生活利便施設が撤退したりするなど、周辺環境の変化も資産価値に影響を与える可能性があります。

◆ 2-3. 相続トラブルリスク

実家を複数の相続人で相続する場合、トラブルが生じる可能性があります。

・遺産分割協議の難航:
誰が実家を相続するのか、売却して金銭で分けるのか、あるいは共有名義にするのかなど、相続人間で意見がまとまらないことがあります。特に、実家に対する思い入れや経済状況は相続人それぞれで異なるため、協議が長期化することも少なくありません。

・共有名義のリスク:
実家を複数の相続人の共有名義にすると、将来的に売却やリフォーム、賃貸などを行う際に、共有者全員の同意が必要になります。意思決定が難しくなるだけでなく、共有者の一人が亡くなると、さらにその相続人に権利が引き継がれ、権利関係が複雑化するリスクがあります。

・寄与分や特別受益に関するトラブル:
被相続人(亡くなった方)の生前に、特定の相続人が療養看護に尽くした(寄与分)場合や、多額の生前贈与を受けていた(特別受益)場合など、相続人間の公平性を巡ってトラブルになることもあります。

◆ 2-4. 税金に関するリスク

相続時には、相続税が発生する可能性があります。また、将来的に売却する際には譲渡所得税がかかることもあります。

・相続税:
実家の評価額やその他の遺産の総額が基礎控除額(3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数)を超える場合、相続税が課税されます。納税資金を準備できないと、実家を売却せざるを得なくなるケースもあります。

・譲渡所得税:
相続した実家を売却して利益が出た場合、その利益(譲渡所得)に対して所得税と住民税が課税されます。ただし、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(3,000万円控除)」などの特例を利用できる場合があります。

・各種特例措置の適用漏れ:
相続税や譲渡所得税には様々な特例措置がありますが、要件が複雑であったり、申告手続きが必要であったりするため、知識不足から適用漏れが生じ、結果的に税負担が増えてしまうリスクがあります。

■■ 3. 実家の土地活用法:選択肢とポイント

相続した実家をどうするかは、所有者にとって大きな課題です。ここでは、主な土地活用法とそのポイントについて解説します。ご自身の状況や実家の立地条件、将来の展望などを踏まえて検討しましょう。

◆ 3-1. 自分で住む

最もシンプルな選択肢は、相続した実家に自分で住むことです。

・メリット:
 * 慣れ親しんだ家や地域で生活できる。
 * 住宅購入費用を抑えられる。
 * 親との思い出が詰まった家を守ることができる。

・デメリット:
 * 維持コスト(税金、修繕費など)を継続的に負担する必要がある。
 * 自分のライフスタイルや家族構成に間取りや設備が合わない場合がある。
 * 通勤・通学に不便な場合がある。

・ポイント:
 * 必要なリフォームや修繕箇所、費用を事前に確認する。
 * 将来的なライフプランとの整合性を考える。
 * 他の相続人がいる場合は、同意を得ておくことが重要。

◆ 3-2. 賃貸する

実家を賃貸物件として活用し、家賃収入を得る方法です。

・戸建て賃貸:
 ・メリット: 安定した家賃収入が期待できる。建物や土地の資産価値を維持しながら活用できる。将来的に自分で住む、または売却するといった選択肢も残せる。

 ・デメリット: 空室リスクがある。入居者トラブル(家賃滞納、騒音など)が発生する可能性がある。修繕費や管理費の負担がある。

 ・ポイント: ターゲットとする入居者層を明確にし、必要に応じてリフォームや設備投資を行う。信頼できる不動産管理会社に委託することも検討する。

・アパート・マンション経営: (建物を解体し、新たに賃貸住宅を建設する場合)
 ・メリット:
戸建て賃貸よりも多くの家賃収入が見込める可能性がある。節税効果(相続税、所得税など)が期待できる場合がある。

 ・デメリット:
多額の初期投資(建築費)が必要。専門的な知識や経営ノウハウが求められる。空室リスクや家賃下落リスクが大きい。

 ・ポイント:
立地条件や市場調査を徹底的に行い、綿密な事業計画を立てる。信頼できる建築会社や管理会社を選ぶことが重要。

・駐車場経営:
 ・メリット:
初期投資が比較的少なく、管理の手間も少ない。建物がないため固定資産税が比較的安い(ただし住宅用地特例は適用外)。

 ・デメリット:
収益性は立地に大きく左右される。税金の軽減措置が少ない。防犯対策が必要な場合がある。

 ・ポイント:
周辺の駐車場需要(月極、コインパーキング)を調査する。アスファルト舗装や精算機設置などの初期費用を考慮する。

・トランクルーム経営:
 ・メリット: 比較的小さな土地でも始めやすい。管理の手間が比較的少ない。建物を建てるより初期投資を抑えられる場合がある。

 ・デメリット: 収益性は立地や競合状況に左右される。集客のための広告宣伝が必要。

 ・ポイント: 周辺地域の収納ニーズを調査する。セキュリティ対策をしっかり行う。

◆ 3-3. 売却する

維持管理の負担やリスクから解放されたい場合、売却は有効な選択肢です。

・メリット:
 * まとまった現金が得られる。
 * 維持コストや管理の手間、空き家リスクから解放される。
 * 相続人間で公平に遺産を分割しやすい(現金化するため)。

・デメリット:
 * 思い入れのある実家を手放すことになる。
 * 希望する価格で売れない可能性がある。
 * 売却益が出た場合は譲渡所得税がかかる。

・ポイント:
 * 複数の不動産会社に査定を依頼し、信頼できる会社を選ぶ。
 * 売却のタイミングを見極める(不動産市況など)。
 * 「古家付き土地」として売却するか、「更地」にして売却するかを検討する(解体費用がかかる場合は注意)。
 * 前述の「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」など、税金の特例が利用できるか確認する。

◆ 3-4. 建て替える

現在の建物を取り壊し、新しい家を建てる方法です。

・メリット:
 * 自分のライフスタイルや家族構成に合った最新の設備を備えた家を建てられる。
 * 資産価値の向上が期待できる。
 * 耐震性や断熱性など、住宅性能を向上させることができる。

・デメリット:
 * 高額な建築費用がかかる。
 * 解体費用や仮住まいの費用も必要になる。
 * 建築基準法や都市計画法などの法規制を確認する必要がある。

・ポイント:
 * 資金計画をしっかりと立てる。
 * 信頼できるハウスメーカーや工務店を選ぶ。
 * 将来的な家族構成の変化なども考慮して間取りを計画する。

◆ 3-5. その他の活用法

上記以外にも、以下のような活用法があります。

・土地信託:
信託銀行などに土地を預け、専門家が土地活用(賃貸マンション建設など)を行い、その収益から配当を受け取る方法。専門知識がなくても土地活用が可能だが、手数料がかかる。

・等価交換:
ディベロッパーに土地を提供し、その土地に建設されたマンションなどの一部(提供した土地の価値に見合う区分所有権)を取得する方法。自己資金なしで新しい建物を取得できる可能性があるが、デベロッパーとの交渉が必要。

・寄付、無償譲渡:
自治体や公益法人などに寄付したり、個人に無償で譲渡したりする方法。社会貢献につながり、維持管理の負担から解放されるが、相手が見つからない場合や、税金(みなし譲渡所得課税など)が発生する場合もあるので注意が必要。

◆ 3-6. 空き家バンクの活用

すぐに活用方法が決まらない場合や、買主・借主を広く探したい場合は、自治体が運営する「空き家バンク」に登録するのも一つの手段です。地域の空き家情報を集約し、利用希望者とのマッチングを支援する制度です。ただし、登録すれば必ず成約するわけではありません。

■■ 4. 専門家への相談の重要性

ここまで様々な維持コスト、リスク、土地活用法について解説してきましたが、最適な選択肢は個々の状況(実家の状態、立地、相続人の状況、資金力、将来の展望など)によって大きく異なります。

自分だけで判断するのが難しい場合は、ためらわずに専門家に相談しましょう。

・不動産鑑定士:
不動産の適正な価値を評価してくれます。

・税理士:
相続税や譲渡所得税などの税金に関する相談や申告をサポートしてくれます。

・弁護士:
遺産分割協議や相続トラブルの解決をサポートしてくれます。

・不動産コンサルタント・不動産会社:
土地活用や売却に関する具体的なアドバイスや仲介業務を行ってくれます。

・ファイナンシャルプランナー: 相続を含めた総合的なライフプランニングの相談に乗ってくれます。

それぞれの専門家の意見を聞きながら、ご自身にとって最善の道を選択することが重要です。

■■ 5. おわりに:前向きな実家相続のために

実家を相続することは、経済的な側面だけでなく、感情的な側面も大きい出来事です。不安を感じるのは当然ですが、事前にしっかりと情報を収集し、計画的に対策を講じることで、その不安は軽減できます。

この記事が、あなたが実家相続という大きな節目を乗り越え、後悔のない、前向きな一歩を踏み出すための一助となれば幸いです。大切な実家を、あなた自身や家族にとって最も良い形で未来へつないでいきましょう。

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