
車検は、日本の法律で定められた車の継続検査であり、安全に走行するために必要なものです。多くの人が車検をディーラーに依頼しますが、「ディーラー車検は高い」と感じている方も少なくないでしょう。
この記事では、元ディーラー営業マンの視点から、ディーラー車検が高額になる理由を徹底解説します。さらに、ディーラーから提案される整備オプションの中から、本当に必要なものとそうでないものを見極めるためのヒントをお伝えします。この記事を読むことで、あなたはディーラー車検の裏側を知り、賢く費用を抑えることができるようになるでしょう。
■■ ディーラー車検が高額になる理由
ディーラー車検が高額になる背景には、いくつかの要因が複雑に絡み合っています。
◆ 1. 車検基本料の設定が高い
ディーラーは、自社のブランドイメージや信頼性を維持するため、車検の基本料金を比較的高めに設定する傾向があります。これには、以下のような理由が考えられます。
・ブランド価値: 「ディーラーで車検を受ける」という安心感や信頼性に対する対価が含まれています。
・充実した設備: 最新の設備や専用の工具を備えているため、その維持費が基本料金に上乗せされます。
・専門知識を持つ整備士: メーカーの研修を受けた専門知識豊富な整備士が担当するため、人件費が高くなります。
・手厚い顧客対応: 車検前後の丁寧な説明やアフターフォローなど、顧客対応にかかるコストも含まれています。
◆ 2. 部品代が高い
ディーラーでは、純正部品の使用が基本となります。純正部品は、社外品に比べて品質が高いとされる一方で、価格も高めに設定されています。また、部品交換が必要な場合、工賃も加算されるため、総額が高額になりがちです。
◆ 3. 過剰な整備や予防整備の提案
ディーラー車検では、車検に通るための最低限の整備だけでなく、将来的な故障リスクを減らすための予防整備や、より快適に車に乗るための追加整備が提案されることがあります。これらの整備自体は車の状態を良好に保つために有効な場合もありますが、中には必ずしも今すぐ行う必要のないものや、費用対効果が低いものも含まれています。
元営業マンとして経験上、ディーラーには「今回の車検でできるだけ収益を上げたい」というインセンティブが働くことがあります。そのため、多少強引に整備を勧めてくるケースも否定できません。特に、車の知識に疎い顧客に対しては、必要以上に高額な整備を提案するリスクがあります。
◆ 4. 代車費用やその他のサービス料
車検期間中の代車費用や、洗車、室内清掃などのサービス料が、車検費用に上乗せされることがあります。これらのサービスは便利ではありますが、費用を抑えたい場合は、代車を断ったり、自分で洗車したりすることで節約が可能です。
■■ ディーラー車検で“頼んではいけない”整備オプション
ディーラー車検で見積もりを提示された際、多くの整備オプションが記載されていることに気づくでしょう。その中には、本当に必要なものと、そうでないものが混在しています。以下に、元営業マンの視点から見て、費用対効果が低く、避けるべき可能性のある整備オプションの例をいくつかご紹介します。
◆ 1. 過剰なエンジンオイル交換・オイル添加剤
「エンジンオイルは定期的に交換が必要」というのは事実ですが、ディーラーでは車検ごとに交換を勧めてくることが多いです。しかし、最近の高性能エンジンオイルは耐久性が高く、走行距離や使用状況によっては、車検ごとでなくても問題ない場合があります。
また、「エンジンオイル添加剤」は、エンジンの性能向上や保護を謳っていますが、科学的な根拠に乏しいものも多く、費用対効果は低いと言えます。特に、新車に近い状態であれば、添加剤はほぼ不要です。
【見極めポイント】:
・自分の車の取扱説明書で推奨されているエンジンオイルの交換頻度を確認しましょう。
・オイル交換時期が近い場合は交換しても良いですが、そうでない場合は見送ることも検討しましょう。
・エンジンオイル添加剤は、基本的に不要と考えて良いでしょう。
◆ 2. バッテリー交換(早期提案)
バッテリーは消耗品であり、寿命がくれば交換が必要ですが、ディーラーでは予防的な意味合いで早期の交換を勧めてくることがあります。「バッテリーが弱っています」と言われると不安になるかもしれませんが、まだ使用できる状態であれば、無理に交換する必要はありません。
【見極めポイント】:
・バッテリーの寿命は一般的に2〜5年程度と言われています。使用期間を確認しましょう。
・バッテリーテスターで状態を確認してもらい、具体的な数値で判断しましょう。「弱っている」という曖昧な表現ではなく、具体的な電圧などを確認することが重要です。
・まだ使用できる状態であれば、次回の車検や点検時まで様子を見るという選択肢もあります。
◆ 3. エアコンフィルター交換(頻繁な提案)
エアコンフィルターは、室内の空気をきれいにするために重要な部品ですが、ディーラーでは比較的短いサイクルでの交換を勧めてくることがあります。確かに汚れていれば交換は必要ですが、走行距離や使用環境によっては、もう少し長く使える場合もあります。
【見極めポイント】:
・エアコンフィルターの交換時期は、一般的に1年または1万キロ走行ごとと言われています。自分の車の使用状況に合わせて判断しましょう。
・目視で汚れがひどい場合や、エアコンの効きが悪くなったと感じる場合は交換を検討しましょう。
・カー用品店などで安価な社外品を購入して、自分で交換することも可能です。
◆ 4. ブレーキフルード交換(過度な推奨)
ブレーキフルードは、ブレーキの性能を維持するために定期的な交換が必要な部品です。ディーラーでは、車検ごとの交換を推奨することが多いですが、走行距離や使用状況によっては、もう少し間隔を空けても問題ない場合があります。
【見極めポイント】:
・ブレーキフルードの交換時期は、一般的に2年に1回程度と言われています。
・ブレーキフルードの劣化は、水分含有量で判断できます。ディーラーで測定してもらい、数値を確認しましょう。
・まだ交換時期でない場合は、見送ることも検討できます。
◆ 5. その他の予防整備(タイミングが合わないもの)
上記以外にも、冷却水交換、タイミングベルト交換(タイミングチェーンの場合は不要)、タイヤ交換、ワイパーゴム交換など、様々な予防整備が提案されることがあります。これらの整備は、車の状態を維持するために重要ですが、必ずしも車検時に行う必要はありません。
【見極めポイント】:
・それぞれの部品の交換時期や推奨されるメンテナンスサイクルを確認しましょう。
・タイヤの溝の深さや、ワイパーゴムの状態などを自分で確認し、交換の必要性を判断しましょう。
・車検とは別に、時期を見て整備することも可能です。
■■ ディーラー車検を賢く利用するためのポイント
ディーラー車検は必ずしも高額になるわけではありません。賢く利用することで、費用を抑えつつ、安心して車検を通すことができます。
◆ 1. 事前に見積もりを依頼し、内容をよく確認する
複数のディーラーに見積もりを依頼し、基本料金だけでなく、整備項目の内容や部品代、工賃などを比較しましょう。見積もり内容について不明な点があれば、遠慮せずに質問することが重要です。
◆ 2. 不要な整備オプションは断る勇気を持つ
ディーラーから提案された整備オプションが、本当に必要なものなのか、今すぐ行う必要があるのかを慎重に検討しましょう。整備の必要性がよくわからない場合は、理由を詳しく聞いたり、他の整備工場に意見を聞いたりするのも有効です。
「今回は見送ります」と、はっきりと断る勇気を持ちましょう。
◆ 3. 交換部品について確認する
交換が必要な部品がある場合、純正部品だけでなく、社外品を選択できるか確認してみましょう。社外品の中にも品質の良いものがあり、費用を抑えられる場合があります。ただし、ディーラーによっては純正部品の使用を推奨する場合や、社外品の取り付けを断る場合もあります。
◆ 4. 車検と整備を分離して考える
車検は、あくまで法律で定められた検査であり、車の安全性を確認するものです。予防整備や追加整備は、必ずしも車検と同時に行う必要はありません。費用を抑えたい場合は、車検は最低限の項目のみで行い、必要な整備は後日、他の整備工場で見積もりを取って検討するという方法もあります。
◆ 5. ディーラーとの良好な関係を築く
日頃からディーラーとコミュニケーションを取り、車の状態について相談しておくことで、車検時に適切なアドバイスを受けやすくなります。信頼関係があれば、不要な整備を勧められるリスクも減るでしょう。
■■ まとめ
ディーラー車検は、安心感や信頼性がある一方で、費用が高額になる傾向があります。その理由は、基本料金の設定、部品代、過剰な整備提案などが挙げられます。しかし、すべての整備オプションが必要なわけではありません。
この記事で紹介したポイントを参考に、見積もり内容をよく確認し、不要な整備オプションを見極めることで、ディーラー車検の費用を賢く抑えることができます。ディーラーとの良好な関係を築きながら、必要な整備は行い、安全で快適なカーライフを送ってください。
車検は決して安い買い物ではありません。しかし、正しい知識を持ち、賢く選択することで、無駄な出費を減らすことができます。この記事が、あなたの車検に対する考え方を変え、より良い選択をするための一助となれば幸いです。
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