
「将来のために資産運用を始めたいけど、何から手をつけていいかわからない」「投資は怖い、損はしたくない」――。
そんなふうに感じている資産運用初心者の方に、ぜひ知っていただきたいのが「個人向け国債」です。
個人向け国債は、国が発行する債券であり、その最大の特徴は「元本割れしない」という安全性にあります。本記事では、リスクを避けながら賢く資産を育てたいと考えているあなたのために、個人向け国債の基本的な仕組みから、具体的な活用術までを徹底的に解説します。この記事を読めば、あなたも安心して資産運用の第一歩を踏み出せるようになるでしょう。
■■ 第1章:そもそも「個人向け国債」とは?基本のキを理解しよう
個人向け国債とは、簡単に言えば「国にお金を貸し、その見返りとして利子を受け取る」仕組みの金融商品です。お金を貸す相手が「日本国」であるため、非常に信頼性が高いのが特徴です。
企業が発行する「社債」が倒産によって価値を失うリスクがあるのに対し、国が破綻する可能性は極めて低いと考えられます。そのため、個人向け国債は金融商品の中でもトップクラスの安全性を誇ります。
◆ 元本保証と最低金利保証という「二重の安心」
個人向け国債が初心者に最適な理由は、主に2つの保証があるからです。
- 元本保証:
満期(お金を貸す期間の終わり)まで保有すれば、預けたお金(元本)が全額戻ってくることが国によって保証されています。100万円分購入すれば、満期時には必ず100万円が戻ってくるため、「元本割れ」のリスクがありません。 - 最低金利保証:
市場の金利がどれだけ低下しても、年率0.05%の最低金利が保証されています。これにより、銀行の普通預金金利(2025年7月現在、多くは0.02%程度)を大きく上回るリターンが安定的に得られます。
この「元本が減らない」かつ「最低でも0.05%の利子がつく」という二重の安心構造が、個人向け国債が「守りの資産運用」として絶大な支持を得ている理由です。
■■ 第2章:どれを選ぶ?個人向け国債の3つの種類を徹底比較
個人向け国債には、金利の決まり方と満期が異なる3つの種類があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身のライフプランに合ったものを選びましょう。
| 種類 | 変動10年 | 固定5年 | 固定3年 |
|---|---|---|---|
| 正式名称 | 変動金利型10年満期 | 固定金利型5年満期 | 固定金利型3年満期 |
| 満期 | 10年 | 5年 | 3年 |
| 金利タイプ | 変動金利\<br>半年に一度、金利が見直される | 固定金利\<br>発行時の金利が満期まで変わらない | 固定金利\<br>発行時の金利が満期まで変わらない |
| 金利の決まり方 | 10年物国債の金利を基に算出 | 5年物国債の金利を基に算出 | 3年物国債の金利を基に算出 |
| こんな人におすすめ | ・将来の金利上昇の恩恵を受けたい人\<br>・10年間使う予定のない資金がある人 | ・5年後の教育資金など、使う時期が決まっている人\<br>・安定した金利で運用したい人 | ・3年程度の短期で、安全に資金を確保したい人\<br>・まずは国債を試してみたい人 |
◆ 「変動10年」が人気の理由
3種類の中で特に人気が高いのが「変動10年」です。その理由は、将来市場金利が上昇した場合、それに連動して受け取れる利子も増える可能性があるからです。インフレ(物価上昇)が懸念される現代において、金利が固定されずに経済状況に合わせて変動する点は大きなメリットと言えるでしょう。満期は10年と長いですが、後述するように1年経てばいつでも換金できるため、柔軟性も兼ね備えています。
■■ 第3章:メリットだらけ!個人向け国債が選ばれる5つの理由
改めて、個人向け国債の具体的なメリットを深掘りしていきましょう。
- 圧倒的な安全性(元本保証):
何度も強調しますが、国が保証する元本保証は最大の魅力です。投資の基本は「資産を減らさないこと」であり、その土台を築くのに最適です。 - 預金より有利な金利(最低金利保証):
年0.05%の最低金利保証により、メガバンクの普通預金に預けておくだけでは得られないリターンが期待できます。 - 1万円から始められる手軽さ:
投資と聞くとまとまった資金が必要なイメージがありますが、個人向け国債は1万円から1万円単位で購入可能です。お小遣いやボーナスの一部から、気軽に始めることができます。 - 毎月購入できる:
毎月発行されているため、「毎月1万円ずつ積立」のように、計画的に資産を形成していくことが可能です。 - いざという時に換金できる柔軟性:
原則として満期まで保有するものですが、購入から1年が経過すれば、いつでも中途換金が可能です。「急にお金が必要になった」という事態にも対応できる流動性の高さも安心材料です。
■■ 第4章:デメリットも正しく理解!知っておくべき注意点
もちろん、個人向け国債にもデメリットや注意点は存在します。リスクを正しく理解することが、賢い資産運用への第一歩です。
- 大きなリターンは期待できない:
安全性が高い分、株式投資のように資産が数倍になるような大きなリターン(ハイリターン)は望めません。あくまで「着実に守りながら少しずつ増やす」ための金融商品と割り切りましょう。 - インフレリスク:
特に「固定3年」「固定5年」の場合、発行後に急激なインフレが起こると、実質的な資産価値が目減りする可能性があります。例えば、金利が年0.3%でも、物価上昇率が年2%であれば、お金の価値は下がってしまいます。このリスクを軽減したい場合は、金利が変動する「変動10年」が有利です。 - 中途換金のペナルティ:
購入から1年未満は、原則として換金できません。また、1年経過後に中途換金する場合、「直近2回分の税引前利子相当額 × 0.79685」 がペナルティとして差し引かれます。元本割れはしませんが、受け取る予定だった利子が減額されることは覚えておきましょう。 - 発行停止の可能性:
絶対とは言えませんが、国の財政状況などによっては、将来的に個人向け国債の発行が停止される可能性もゼロではありません。
■■ 第5章:【実践編】賢い活用術!あなたの資産ポートフォリオにどう組み込むか?
個人向け国債の特性を理解したところで、いよいよ具体的な活用術を見ていきましょう。ポイントは「守りの資産」としての役割を明確にすることです。
◆ 活用術1:生活防衛資金の置き場所として
生活防衛資金とは、病気や失業など、万が一の事態に備えるための生活費です(一般的に生活費の3ヶ月〜1年分が目安)。この資金は、すぐに引き出せる流動性と、絶対に減らない安全性が求められます。
普通預金に全額を置いておくのは金利面でもったいない。かといって、リスクのある投資に回すわけにはいかない。そんなジレンマを解決するのが個人向け国債です。
・普通預金:
日々の生活費や、すぐに使う可能性のある資金
・個人向け国債:
すぐには使わないが、1年以内に使う可能性は低い生活防衛資金
このように役割分担することで、安全性と収益性のバランスを取ることができます。
◆ 活用術2:目的が決まっている資金の運用先として
「5年後の子供の大学入学資金」「10年後の住宅購入の頭金」など、使う時期と金額が決まっているお金の運用にも最適です。
株式などで積極的に運用した場合、いざ使うというタイミングで暴落に見舞われるリスクがあります。個人向け国債であれば、元本割れのリスクなく、満期に合わせて計画的に資金を準備できます。「固定5年」や「固定3年」は、こうした目的に特に適しています。
◆ 活用術3:資産全体のクッション(緩衝材)として
NISAなどを活用して株式投資信託など、ある程度リスクのある商品(攻めの資産)で資産運用を行っている方にも、個人向け国債はおすすめです。
資産全体に占める個人向け国債(守りの資産)の割合を高めることで、市場が暴落した際にも資産全体の目減りを抑えるクッションの役割を果たしてくれます。精神的な安定にも繋がり、長期的な資産形成を続ける上で大きな助けとなるでしょう。
ポートフォリオ例(30代・初心者)
・攻めの資産(NISAなど): 50%
・守りの資産(個人向け国債): 30%
・流動性資金(預貯金): 20%
このように、資産を異なる性質の金融商品に分散させる「ポートフォリオ」の考え方において、個人向け国債は守備の要となる重要な存在です。
■■ 第6章:今日から始められる!個人向け国債の購入方法
個人向け国債の購入は、意外なほど簡単です。以下のステップで誰でも始めることができます。
- 金融機関を選ぶ:
個人向け国債は、証券会社、銀行、ゆうちょ銀行など、多くの金融機関で購入できます。普段利用している銀行や、ネット証券など、ご自身が使いやすい場所を選びましょう。 - 証券総合口座を開設する:
国債を購入するには、まずその金融機関の「証券総合口座」を開設する必要があります。オンラインや店舗で手続きが可能です。すでにNISAなどで口座を持っている場合は、その口座で購入できます。 - 購入を申し込む:
口座開設後、毎月募集されている個人向け国債の中から、希望の種類(変動10年、固定5年、固定3年)と金額を決めて申し込みます。 - 利子の受け取りと償還:
半年ごとに利子が口座に振り込まれます。そして、満期を迎えると元本が自動的に口座に戻ってきます。
■■ まとめ:最初の一歩に、最高の選択を
資産運用と聞くと、複雑な知識やリスクが伴うイメージが先行し、なかなか一歩を踏み出せないという方は少なくありません。しかし、個人向け国債は、その不安を払拭してくれる極めて優れた金融商品です。
「元本割れしない」という絶対的な安心感を土台に、銀行預金以上のリターンを目指せる個人向け国債は、まさに資産運用初心者のための”練習台”であり、将来の資産を守るための”防波堤”でもあります。
まずは少額の1万円から。この記事をきっかけに、あなたの資産を守り、そして育てるための賢い第一歩として、個人向け国債の活用を検討してみてはいかがでしょうか。その小さな一歩が、10年後、20年後のあなたの未来を大きく変えることになるかもしれません。









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