
車を所有する人にとって、定期的に訪れる「車検」は頭を悩ませる大きな問題です。中でも「ディーラー車検は安心だが高い」とよく言われています。この記事では元ディーラー営業マンの視点から、なぜディーラー車検は高額になりがちなのかを詳しく解説し、実際には不要で避けるべき整備オプションも明確にお伝えします。
■■ なぜディーラー車検は高額になるのか?
ディーラー車検が他の民間車検業者よりも費用が高い理由は主に以下の通りです。
◆ ①「純正パーツ」の使用による部品代の高さ
ディーラーでは基本的にメーカーが指定する「純正部品」を使用します。これらの純正部品は高品質で安心ではありますが、その反面、コストが高く設定されており、市販の同等品(社外品)と比べて割高になりがちです。
◆ ②高めの整備工賃と時間単価
ディーラーは専門的な教育を受けた整備士やメーカー指定の高度な整備機器、設備を揃えており、その設備投資や人件費が工賃に反映されます。そのため、簡単な作業でも割高の工賃設定となってしまいます。
例えば、一般的な町の整備工場で数千円で済むオイル交換がディーラーでは数倍の料金になることも珍しくありません。
◆ ③ノルマ達成のための過剰整備の勧誘
多くのディーラーには車検に関連する売上目標(ノルマ)が存在します。このため、車検の際にはブレーキパッドやバッテリー、タイヤ交換など、本来まだ使えるパーツに対しても予防交換を勧める傾向があります。
車検に持ち込んだ車が、営業スタッフによって「消耗品の交換が必要」と積極的に提案され、結果として料金が大幅に膨らむことがあります。
■■ 元営業マンが暴露する「頼んではいけない整備オプション」
ここからは、実際にディーラーで車検を受ける際に勧められやすいが、必ずしもその場で頼む必要がない整備オプションを挙げていきます。
◆ ①エアコンフィルター交換
エアコンフィルターは汚れたら交換が必要ですが、ディーラーで交換すると部品代と工賃を含めて数千円から1万円近く取られる場合があります。しかし、エアコンフィルターはネット通販やカー用品店で1000~3000円程度で購入可能で、交換も自分で簡単に行えるため、ディーラーで依頼する必要性は低いです。
◆ ②エンジンオイル添加剤や燃料添加剤の追加
ディーラーでは「エンジン性能向上」や「燃費改善」を理由に各種添加剤の追加を提案されることがあります。こうした添加剤は一定の効果が認められるものもありますが、多くの場合は体感できるほどの変化が得られないことが多く、高額の費用に見合う効果を感じるのは難しいでしょう。
そもそも普段のオイル交換や給油時の管理をしっかりしていれば、多くの場合、こうした添加剤を追加する必要はありません。
◆ ③バッテリー交換(ディーラー純正品)
バッテリーは確かに消耗品ですが、ディーラー純正品は割高です。ディーラー車検時にバッテリー交換を提案されるときは、寿命が近づいているという理由が多いですが、実際にはカー用品店やネットで購入できる互換品でも品質的には十分で、費用を半分以下に抑えられます。
◆ ④早すぎるタイヤ交換の提案
ディーラーでは溝がまだ十分に残っていても、「安全性」を理由にタイヤの早めの交換を勧めることがあります。一般的にタイヤの溝は新品時で約8mm、法律的な使用限界は1.6mmです。溝が4~5mmもあるのに「早めに交換しましょう」と提案された場合は要注意です。その場で決めず、冷静に他店と価格を比較するのが良いでしょう。
◆ ⑤ブレーキパッドやディスクローターの予防的交換
ブレーキ関連のパーツは安全性に直結するため、ディーラーでも積極的に勧められます。しかし、残量が5mm以上残っている場合や、ディスクローターに大きな損傷がない場合は急いで交換する必要性は低く、数か月〜1年後に改めて点検してから決めることも十分可能です。
■■ ディーラー車検で無駄な出費を抑えるための対策
ディーラーで車検を受ける場合、以下のような方法で無駄なコストを削減できます。
◆ ①車検前に複数の業者から見積もりを取る
事前に複数の業者(ディーラー、民間工場、車検専門店)から見積もりを取り、相場を把握しましょう。その見積もりをディーラーに見せることで、「他店の価格に近づけてもらう」など交渉材料になります。
◆ ②必要な整備だけを依頼し、消耗品の交換は他店で
ディーラーで交換する必要があるのは緊急性のある整備だけです。それ以外の消耗品については車検合格後に安価な整備工場やカー用品店で交換するとトータルコストが抑えられます。
◆ ③「純正品」にこだわらない
消耗品は品質が安定したメーカー品ならば純正にこだわらなくても十分な安全性を維持できます。市販の社外品で代用できるパーツは積極的に選択しましょう。
■■ まとめ:ディーラー車検を賢く利用するために
ディーラー車検は安心感こそありますが、その安心感ゆえに「過剰整備」の提案が避けられないのも現実です。大切なのは提案された内容を鵜呑みにするのではなく、自分で判断する知識と情報を持つことです。
消耗品交換など必要性の低いオプションをしっかりと見極め、納得のいく整備だけを選択できるようになると、ディーラー車検でも驚くほど費用を抑えることが可能となります。
ディーラーの「ブランドイメージ」と「整備内容の適切さ」をバランスよく見極め、自分自身が主体的に判断することが車検費用を抑える最も効果的な方法です。










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