
■■ ひとり親家庭における養育費不払いの深刻な現状
養育費は、別れた親が子どもに対して負う、「生活の義務」に基づくものです。
しかし、厚生労働省が実施した調査によると、母子家庭の約7割、父子家庭の約8割が養育費を受け取っておらず、これが日本のひとり親家庭が直面する最も深刻な課題の一つとなっています。
この不払いの背景には、相手方が支払う意思がない、連絡先がわからない、経済的に余裕がないなど、様々な理由があります。
多くのひとり親は、養育費を受け取るための法的手続きが煩雑で費用もかかるため、泣き寝入りせざるを得ない状況に追い込まれています。
この現状は、ひとり親家庭の経済的自立を妨げ、子どもの貧困に直結するだけでなく、精神的な負担も増大させます。
養育費を受け取れないことによって、ひとり親は子どもの教育費や生活費を確保するために長時間労働を強いられたり、非正規雇用に留まらざるを得なかったりすることが少なくありません。
これは、子どもの健やかな成長にも影響を及ぼしかねない問題です。
■■ 養育費不払いの原因と背景
養育費が支払われない主な原因は、次のようなものが挙げられます。
・取り決めがない:
そもそも離婚時に養育費の取り決めを口頭や書面で交わしていないケースが非常に多いです。
感情的な対立や、早く離婚したいという思いから、この重要な取り決めを後回しにしてしまうことがあります。
・相手方の支払意思の欠如:
支払う意思が最初からなかったり、離婚後に再婚したり、新しい生活を始めたりすることで、養育費の支払いを怠るケースがあります。
・相手方の経済的困窮:
相手方が失業したり、収入が減少したりして、養育費を支払うことが困難になる場合があります。
・法的手続きの壁:
養育費を受け取るためには、裁判所の調停や審判、強制執行などの手続きが必要となりますが、これらの手続きには時間と費用がかかります。
また、相手方の財産や勤務先を特定する必要があるため、心理的・物理的なハードルが高いです。
■■ 育費不払いを乗り越えるための具体的な解決策
養育費不払いの問題に直面したとき、ひとり親は決して一人ではありません。
国や自治体、そして専門家が提供する様々な支援策を活用することで、状況を改善できる可能性があります。
◆ 1. 養育費の取り決めを公正証書で作成する
養育費の取り決めは、口約束ではなく、公正証書という公的な文書で作成することが最も重要です。
公正証書には、強制執行認諾文言という条項を盛り込むことができます。
この条項があると、万が一相手方が支払いを怠った場合、裁判所の判決を待つことなく、給与や預金口座などの財産を差し押さえる(強制執行)ことが可能になります。
◆ 2. 公的な支援制度を利用する
養育費の不払い問題を解決するために、国や地方自治体による支援制度が増えています。
・養育費保証制度:
一部の自治体では、養育費の取り決めをしたにもかかわらず、相手方から支払われない場合に、自治体が養育費を立て替えて支払う制度を導入しています。
これは、ひとり親家庭が養育費を安定的に受け取れるようにするための画期的な制度です。
・養育費相談支援センター:
専門の相談員が、養育費の取り決め方法や法的手段について無料でアドバイスを提供しています。
◆ 3. 法律専門家への相談
弁護士や司法書士は、養育費の取り決めや強制執行などの法的手続きを代行してくれます。
費用はかかりますが、複雑な手続きを円滑に進めることができ、精神的な負担を軽減できます。
また、弁護士費用を支払うのが難しい場合は、法テラス(日本司法支援センター)の民事法律扶助制度を利用することができます。
これにより、弁護士費用や裁判費用を立て替えてもらうことができ、経済的な理由で法的手段を諦める必要がなくなります。
◆ 4. 財産開示手続・第三者からの情報取得手続
相手方が財産を隠している場合でも、財産開示手続や第三者からの情報取得手続を利用することで、相手方の財産情報を強制的に開示させたり、金融機関や市区町村から情報を取得したりすることが可能です。
これにより、強制執行の成功率を高めることができます。
養育費は、子どもの将来を守るための大切なものです。
養育費の不払いに悩んでいる方は、一人で抱え込まず、これらの制度や専門家の力を借りて、子どもたちの未来のために一歩踏み出すことが重要です。










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